The Melody At Night, With You

The Melody At Night, With You

アーティスト
Keith Jarrett
パブリッシャー
Ecm Records
価格: ¥1,627

The Melody At Night, With Youのレビュー

夜の匂い、闇のあじわい。
夜の匂いが闇に広がって、
このメロディー、音楽によって
それが充たされていく時の、すばらしさ


最初の一音で、
完全にその世界にトリップさせてくれる「静寂の衝撃」は
「ケルンコンサート」に迫る


「ケルン」が、文字通り“音楽の聖堂”という感じで、
聖なる緊張感と、劇的な展開を持っているのに対して
こちらはどこまでも親密な、部屋の音楽であることを失わない
もう一つのキース
美しいフレーズの数々、豊穣なタッチのきらびやかさがキースの魅力ならば、
淡々としたタッチでスタンダード曲を紡ぐこのアルバムも、別の意味で十分魅力的です。
病み上がりの時期の録音だとか。
本人がどのような心情で演奏しているのかは定かではないですが、
夜に寛ぎながら聴くことの多い一枚です。
至高の音楽

この作品について「イージーリスニング」「テンションが足りない」「キースらしくない」といったコメントが多数ありますが、この演奏におけるキースの「入魂」に気づかない方が多いのに驚きます。

Jazz Pianoを生業とする者のハシクレとして率直な感想を述べるならば、このキースの演奏にはコルトレーンの「至上の愛」に通ずる高い精神性と音楽に命を捧げる魂を感じます。私にはキースが命がけで自分自身の寿命を縮めながら一音一音を血を吐きながらアドリブフレーズを紬ぎだしている様がはっきりと見て取れます。これは静かだけれど命がけの演奏です。

例えばM2は、ハイエンド再生機器で聴けばキースのうなり声もちゃんと聞こえるし、キースの右手から繰り出される美しすぎてこの世のものとは思えない、しかしギリギリ命がけの脆さを含んだフレーズの凄さに圧倒されるばかりです。

もちろん聴き方は自由です。確かに癒される音楽でもあります。

しかし、この音楽は間違いなくキースの他のアルバム同様、いやその中でも傑出して命をかけて、寿命をすり減らしながら演奏された入魂の音楽であることに変わりはありません。
夢にまでさ 出てきやがる
 キースがさ、こんな作品をリリースするなんて誰が想像できたであろうか?ここに革新はない。ピアノ・ソロで、ただひたすら美麗に
紡がれる珠玉のバラード集だ。
病気療養中に自宅で録音された本作。暗い荒野に絶望的に取り残され、それでもかつてのフィールドに返り咲こうともがいたこの一枚。
確かに人によっては、キースらしくないノーマルな演奏は退屈なのかもしれない。が、やはり一音の重さが違う。タイム感の合間に
にじみ出すものが違うような気がして僕はならない。
一枚通して素晴らしいが、やはり9曲目は。。。。これは奇跡の輝きを有している。誇張じゃなく。もう一度もう一度夜明けを、、
絶望的に打ちひしがれながらも、まさに寒さで凍っていた土が融けて、いまにも草木の新芽が頭を出そうとしているような、そんな
最大級の希望を感じる名演だ。大抵この一曲が聴きたいが為に、この一枚をひっぱり出すんだよ。
それにしても、ここのレビューを見ていると、みなさん色んなおもいを持って聴いているんですね。なぜか嬉しくなる。
とても個人的な話をするなら、僕はこれを集中的に聴いている時期はよく同じ夢を見るなあ。浜辺におかれたピアノ、演奏する
キース....じゃなくて、なぜか日本人女性。子羊みたいな顔をした。そこへ通りがかった、まだほんの、みっつよっつの黒人の男の子。
かれは一瞬にして、女性ごとピアノをまる飲みしてしまう。そしてお腹の中から鳴りやまないメロディーを聴いて永遠のようにそこに
佇むのでした。。これはなんだ。なぜ聴衆じゃ駄目なの?自分のものにしたかったの?誰でもいいから夢判断してくれ〜。
と、完全に....完全に....脱線したが、まあそれでも(開き直り)、就寝前に聴けば、おもいおもいの夢を見れるんじゃないだろうか。
日常の喧騒から隔絶され、体は優しく弛緩して、心が、精神が柔らかく覚醒する。そんな甘美なひと時をくれる一枚なのです。
今の時代、これで癒される人は、ある意味幸せでしょう
当アルバムを初めて手にしたのが99年。十年間いろいろありました、個人的にも、世の中、社会全体も。100のレビューすべてに目を通しました。
やはり、私なりの意見を述べておきたい衝動を抑えきれませんでした。

この美しいメロディーによって、多くの人々は心の安らぎを覚えて、芳醇な時を奏でてくれることでしょう。
世代を問わず、ジャズなる音楽にいまだかつて触れていない人でも。ただ美しい。それだけで人の心を豊かにしてくれるなら敢えて異論を唱えるのは野暮というものです。

しかれども、言いたい要点はここから。
「癒し」が時代のキーワードになっていた頃、まだ素直に受け入れられたのです。けれど十年前に聴いた印象と今聴いた印象と明らかに違います。
時代のタームは十年一区切りで変遷するものだとよく言われます。今よりも良かった時代から響いてくるような、そんなズレを感じてしまうのです。
全曲が終わるまでの心が癒される満ち足りた時間。それは、過去のあの時代。今、聞こえるのは何かよそ事みたいな距離の隔たり。そう感じてしまうのは私だけでしょうか。

贈り物にするには良い。そうですね、合格祝いとか結婚祝いとか、受け取る人が幸せの絶頂期ならば。
自分の心境にすんなり溶け込めるのは、Duke Ellington & John Coltrane の「In a sentimental mood 」のほうです。
キースのこのアルバムに出会った時のような僥倖が、この先にあるはずだと願うばかりです。